A Day In Junkudo 2

2月も、ジュンク堂に赴き、その書架の海に潜り、そしてこれはと思う本を探すイベントがつつがなく行われた。我が家ではそのイベントを「ジュンク堂大会」もしくは「ジュンク堂の日」と呼んでいる。どちらでもいいのだけど、そろそろどちらにするか決めておいた方が良いかもしれない。

前回の三冊は、結論から言うとどれもとても面白かった。まず読み上げたのは、「にほんの建築家 伊藤豊雄観察記」だった。頭の中かから現実にそのイメージを物として焼き付けるプロセス、そのパワー、その執念。あたりまえだけど、マクロな視点からミクロな視点まで、ネジをどうするかに至るまで誰かが決めないといけないのだ。それを統治すべく君臨する建築家

そして「たったひとつの冴えたやり方」は文章の軟らかさに完全にしてやられたと言っていいだろう。少年SFという印象で読み進んでいったらあんな結末に導かれるとは!

「重力のデザイン」は二部構成といえるのではないかと思うけど、前半はみっしりと印刷物、とりわけタイポグラフィーと重力という事に対して述べられている。そろりそろりとしか進めないのだけど、知的で魅惑的な、いうなれば都市の風景だ。そして、後半はうって変わって軽やかな郊外の風景とでも言えるデザインの中の写真の話題となる。前半とは違って、なにか作者の思索をみていると言うという印象が強い。

さて、今回はジュンク堂の池袋店で行った。別段店舗を変える理由もなかったのだけど、変えない理由もなかったのだ。ただ、あちこちふらふらと泳ぎ回るには、フロア数が多いというのは意外にやりづらいということが分かった。その点、新宿店は3フロアで横に長い売り場レイアウトなので適している。そんなのは書店の良し悪しとは全く関係ない事なんだけど。

今回感じたのは、どこを起点に見るかというその最初の視点も自分の選択に影響を与えてるのではないかということだ。次回はドリトル先生のように目をつぶって指さしたところからスタートというのも良いかもしれない。狙うは知のモンテカルロ法なのだ。

それでは今回選んだものをご紹介しよう。

デザイナー石岡瑛子さんの、自伝的、プロジェクトがどうやって生まれどうやって完成していったかが当のデザイナーの一人称の視点で語られる一冊。前回の伊藤豊雄氏の話もそうだけど、物が出来ていくその現場というのはパワーがあふれていていい。

書架の一番上の段にあったこの本の装丁がふと目を引き、そしてマイルス・ディビスのTUTUのデザインをやったという最初のカラーをみたときにとても興味を引かれたのだ。

前回建築物を選んだから・・・ではなく、平積みになってるこの本の表紙のアイコンっぽい絵に惹かれたのだ。中を見て建築関係の書籍と分かったときは正直、「あちゃあ、かぶったか」と思ったのだけど、その簡潔にまとめられた建築家の思考カタログ的なところにぐっときたのだ。意識しない所にも建築家の意識が込められている。

フレンチのシェフ斉須政雄さんの自伝。読んでいると、とても元気が出る本。ぐいぐいと読み進んでしまう。

もともとは「ほぼ日刊イトイ新聞」の連載がベースになってるようだ。

ただ継続してやるという事のすごみを感じる。やってきた人だからこその言葉の本物さを感じるのだ。